オンブズマンはスウェーデンが発祥といわれ、代理人を意味するスウェーデン語です。議会や行政から任命されながらも、第3者的な立場で行政を監視、調査する権限を持つ法的な力を持つ組織です。
日本では、総務大臣から委嘱された全国約5,000人の行政相談員がボランティアで、この役割を果たしているとされています。
日本では1970年代後半に、オンブズマン制度の議論がなされたのですが、その背景にはロッキード汚職事件がありました。しかし、政治汚職は検察と警察の取り締まり対象であり、行政上のオンブズマンは関与しないものとされています。
では一体、政治の不正を質す『オンブズマン』とは何者なのでしょうか?
1 公的オンブズマン
行政相談員が国政に対する国民の苦情を、総務大臣に物申す形であるのに対して、一部の自治体では条例によって、自治体における公的オンブズマンを制定している場合もあります。
2 行政への苦情窓口
公的オンブズマンは市民の行政に対する苦情窓口であるとともに、その問題の原因追求と解決を図る役割を持っています。
苦情の趣旨が認められた例としては、
「駅前の駐輪場のスペースを拡大してもらいたい」
「横断歩道閉鎖をやめてほしい」
といった内容で、自治体に何らかの落ち度があって市民生活に不利益を与えている場合に、見直しを検討するなどの対応がなされています。
3 私的オンブズマン
一方、全国市民オンブズマン連絡会議に代表される私的オンブズマンは、市民が自発的に行なっています。行政による縛りがなく、政治的な領域まで手を伸ばした活動を行っています。
4 不正を質す!
私的オンブズマンの活動を有名にしたのが、号泣会見で有名になった元兵庫県議会のカラ出張汚職事件の告発です。
私的オンブズマンは、政治的な側面が強い団体もあります。また、特定業界への利益誘導を目的とした団体もあり、公的オンブズマンの独立・中立の原則とは一線を画しているとの指摘もあります。
5 川崎市の場合
「川崎市市民オンブズマン」という公的オンブズマンと、
「かわさき市民オンブズマン」という私的オンブズマン
が同居していて、偶然にも名称まで似ているため、同じ団体ではないかと混同する原因になっているように思います。
ちなみに、政務調査費の会計報告を例に挙げると、
①『会派事務局』でチェック
↓
②『議会事務局』でチェック
↓
③『オンブズマン』がチェック
と3重のチェックを経てようやく議員の経費が貰えるという仕組みになっているそうです。意外に監視の目が厳しいと思ったのは私だけでしょうか?