福沢諭吉先生は、”学問のすゝめ“ の中で「人に貴賎はないが、勉強したかしないかの差は大きい。」「事実をおさえ、確かめ、その結果に立ち、物事の基本的な筋道を知るべきだ。それが日常生活に役立つのである。」とおっしゃっています。
ここでいう勉強というのは、当時では読み書き算盤のような「実生活に役立つ学問」の事を指しています。現代ならば、メディアリテラシーやデザイン思考などを指すのだと思います。
さらに、言行不一致をとがめて、「理論と実行は寸分も食い違うことなく、一致させなければ、信用は得られない」とおっしゃっています。つまり、自分の政策の確からしさを説得させて実現するには、それ相当の努力が必要なのです。
1 根拠を示せなければただの戯言
議会の議事録から、これまでどのような議論がなされて、政策が動いてきたのかを知ることは議会質問の前提になります。膨大な議事録全てを読み解くのは至難の技ですが、議会運営関係者、ベテラン議員の賛同・協力を得る議会質問を行うには、政策課題の深い理解と説得力が欠かせません。
その上で、政策課題の仮説検証と解決策を導き出すメソッドや、情報やデータを活用して政策の実用性に説得力を備えるためのEBPM(根拠に基づく政策立案)の考え方が重要になってきます。
政策課題の背景にある、データや情報から「事実」を見つけ出し、仮説を実証して、合意形成へ至るプロセスを身につけることが、政策実現の原動力になるのです。
2 聞こえない声を拾う
市民にとって地方議員は比較的身近な存在です。地域のためにと働く地方議員の多くは、地域のイベントに顔を出し挨拶まわりを行い、町会・自治会や民生員、地元企業の状況を聞いてまわることで、地域の課題を探しておられると思います。
しかし、良かれと思って取り組んだことが、一部の市民への利益誘導になってしまったり、各地で町会・自治会や子供会に参加しない世帯の割合が増え、本当に市民の声を聞けているのか戸惑いを感じることもあるのではないでしょうか。
3 チンパンジー以下の思考に陥ってないか!?
挑発的な見出しでスミマセン。
これは、ハンス ロング氏の著書でベストセラーにもなったビジネス書「FACT FULLNESS(ファクトフルネス)」の書評で書かれていた言葉です。ロリング氏は、世界の状況を把握しているはずのエリートたちが3択問題で1/3の正解も出せなかった理由は、思い込みの原理があると指摘しています。そしてその過ちを犯さないためには、事実(FACT)に基づいて地道な分析が必要だと主張しています。
ちなみに、チンパンジークイズとして12のクイズがネット上でも公開されていますが、共訳者の上杉周作氏が、チンパンジークイズ の日本版を作成し公開しています。ニホンザルに勝てるか?トライしてみてはいかがでしょうか。
4 施策→結果→成果
行政が抱える問題を解決しようとする時、問題の原因の因果関係を仮説として立てていきます。問題を引き起こしている原因は一つであるはずはありません。複雑多岐にわたる因果関係を洗い出していきます。それと同時に、その因果関係を示す事実を見つけていくのです。
この時に自分の仮説に都合が良いデータを探したのでは、どこかで破綻してしまいますので、前項の「FACT FULLNESS」を意識して頂けると良いでしょう。
こうして見つけた「◯◯だから、⬜︎⬜︎できない」という因果関係を「◯◯できているから⬜︎⬜︎できている」というように逆転していくアイデアのことを「施策」といいます。「施策」によって短期的に起きる変化を「結果」といい、起こった変化が持続的に何らかの影響を与え続ける状況を「成果」といいます。
5 政務調査費をちゃんと使って欲しい
市民の状況を調査する方法は大きく分けて、「定性調査」と「定量調査」があります。
・定性調査:顔を付け合わして市民から情報を得ることは、その道に詳しい有識者から状況を深掘りして把握する方法
・定量調査:電話調査やアンケートによる統計手法によって数多くの市民から情報を得る方法
政策立案する場合の根拠となる情報が存在しない場合は、このような方法で人手を掛けて調査しなければならないこともあります。