政務調査費,政務活動費,広報費,経費

目次

1:「政務調査費」から「政務活動費」へ
2:いくら貰える?
3:いくら払う?誰がどうやって決める?
4:公私混同を許さない仕組み
5:そうは言っても選挙と表裏一体
6:参考資料

 

日本における議会の歴史は明治時代に始まりました。当時名誉職だった議員に報酬はなく、議会へ出席するための交通費など最低限の経費のみが支給されていました。戦後になって、曖昧だった議員の立場を「非常勤の特別職の公務員」としたことに伴って、報酬を支給することが地方自治法で定められました。

近年になって、都市部一極集中や少子高齢化など中央集権が時代に合わなくなり、地方分権の動きが活発になってきました。2000年の地方分権一括法の施行などによって、地方自治体の役割が増すことになりました。これらの流れから、地方議員の政策調査研究などの活動のために経費が必要だとして“政務調査費”が 支給されることになりました。

 

1 「政務調査費」から「政務活動費」へ

さらに、2012年の地方自治法改正により、それまで「調査研究」のみに限定されていた使途が広がり(自治体によって異なります)、”政務活動費”へと改称されました。

弊社の地元、江東区議会の場合を見ると、

調査研究費、研修費、広報費、広聴費、要請、陳情活動費、会議費、資料作成費、資料購入費、人件費、事務所費

の10項目にわたる費用について、政務活動費としての支出が認められています。

 

2 いくら貰える?

交付額は自治体によって額は異なります。平成28年総務省の調査によると、47都道府県の議会のうち、最も支給額が多いのは東京都の60万円。最も少ないのは沖縄県の20万円となっています。

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東京都の区議会について見てみると23区内でも差があり、最も多いのは、世田谷区の24万円。最も少ないのは、荒川区の8万円となっています。ちなみに東京都下で最も交付額が少ない自治体は檜原村で3千円となっています。

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全国ほとんどの市町村で政務活動費が支給されています。その額は、概ね数千円~数万円ですが、神奈川県53万円に対し、横浜市は55万円というように、基礎自治体の支給額の方が多いケースもあります。

また、支給先も自治体によって異なり、会派(議会内で活動をともにするグループのこと)に支給、議員へ直接支給、或いはその両方だったりします。

 

3 いくら払う?誰がどうやって決める?

支給額は各自治体の議会によって、決められています。議員は自分たちへの支給額を自分たちで決めるわけですが、限られた財源の中で、十分な支給が行われているとは言えないケースが多いようです。

地方自治法第100条14項によると「普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる」とあります。

政務活動費の受給について、江東区議会事務局にお聞きしたところ、受給には収支報告書が必要で、議会事務局はその事務を担当するものの、承認するかどうかは議長に掛かっているとのことでした。

 

4 公私混同を許さない仕組み

そうなると、議長と親しくしている議員は需給がしやすくなるのではないか?という疑問が湧いてきます。

元兵庫県議員のカラ出張問題はメディアでも大きく取り上げられ、記憶に新しいことと思います。

弊社で広報物の制作支援をさせて頂いている政治家の方々は、ごく普通の感覚を持ち合わせた方ばかりなだけに、心ない政治家の行動によって「政治家=悪者」のイメージがついてしまうことは、非常に残念なことだと感じています。

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これらの事件をきっかけに、政務活動費の厳格化が進んで来ました。しかし、厳格化の一方で、収支報告が必要でかつ使途の制約が多い政務活動費を廃止。その分を議員報酬に上乗せして、使い勝手を良くすると見られかねないような動きもあり、物議を醸しているケースもあります。

これらの対応策として、市民や第三者組織によるチェックを行う自治体もあります。政治の不正を質すオンブズマンとは何者かでも取り上げましたが、不正を無くすための工夫として2重、3重のチェック体制を敷いている自治体があります。弊社がある江東区も、川崎市と同様に3重チェックで不正を防ぐ工夫をしているそうです。

 

5 そうは言っても選挙と表裏一体

東京都議会ホームページによると、東京都議会における政務活動費の支給総額7億4550万円のうち、もっとも多く支出されているのは広報紙発行費で3億4566万円 47.6%(令和元年)となっています。

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広報費は「議会レポート」といった形で、有権者に対して行う広報活動費です。本来会派の議会活動を報告するものですが、会派が何なのかを知らない人も多く、会派名よりも議員の名前の方が馴染みのある場合もあります。そんなことから、選挙ビラと見間違うような広報物も見受けられるようです。

議会事務局としては条例に従い、私的な経費と政務活動に係わる経費を按分するように求めているようですし、議会事務局の指摘通り、按分している会派・議員がいます。

しかし、議会事務局はあくまでも事務処理を行う機関に過ぎないため、会派と議長の承認があれば、問題視されていても見過ごされてしまう実態もあるようです。

 

6 参考資料

弊社では、これまで多くの議員さんの広報活動に携わって来ました。弊社もかつては、「政治活動」「選挙活動」「議会活動」の違いを知らずに、コミュニケーションツールを制作していました。

議会レポートの作成業務に携わることが増えるにつれ、あるべき姿を求める必要を感じたことがこの記事に繋がっています。

政治とカネの問題は、尽きることがありませんが、政務活動費に関するルールが明確では無いことが、問題を生む原因の一つになっているように思います。この記事が明確なルール作りの一助になれば幸いです。